マレーシア完全攻略【基礎知識編】

この記事では、マレーシアに滞在する上で知っておいた方が良いであろう基礎知識を簡潔にまとめた。マレーシアについて全然知らないという人でも、この記事にサラッと目を通しておくだけでこの国の見え方が変わってくるはずである。

マレーシアの基本情報

正式名称:マレーシア連邦

首都:クアラルンプール

面積:約33万平方キロメートル(日本の約90%)

人口:約3,300万人

公用語:マレー語(国語)、英語、中国語、タミル語も広く使用

通貨:マレーシアリンギット(RM)

宗教:イスラム教(国教)、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教など

民族構成:マレー系・先住民族 約7割、中華系約23%、インド系約7%、その他1%

時差:UTC+8 日本より1時間遅い


マレーシア誕生までの流れ

地理構成と周辺国

気候

王政と政治

多民族・多文化社会

宗教

言語

通貨と物価

税制・サービス料金

交通事情・移動手段

治安

食文化の多様性

マレーシアの主な国際行事


マレーシア誕生までの流れ

マレーシアは、15世紀にイスラム王国として栄えたマラッカ王国を起源とし、その後ポルトガル、オランダ、イギリスによる支配を経て、第二次世界大戦中には日本軍の統治下に置かれた。戦後は再びイギリスの支配下となるが、1957年にマラヤ連邦として独立。さらに1963年、サバ州・サラワク州・シンガポールと合併し、「マレーシア」が誕生した。シンガポールは1965年に分離・独立。


地理構成と周辺国

マレーシアは「マレー半島部(西マレーシア)」と「ボルネオ島北部(東マレーシア)」に分かれているユニークな地理構造を持つ。クアラルンプールなどの主要都市は西マレーシアにあり、東マレーシアにはサバ州・サラワク州といった豊かな自然と独自文化を持つ地域が広がる。両者の間は飛行機移動が基本で、陸続きではない“飛び地構造”となっている。陸上で国境を接するのは、西マレーシアはシンガポールとタイ、東マレーシアはインドネシアとブルネイ。


気候

赤道に近く、年間を通じて高温多湿の熱帯雨林気候に属する。平均気温は27〜32℃前後。突然のスコール(短時間の激しい雨)が降るのも日常的だが、一日中雨というような事は殆どないので観光はしやすい。地域によって乾季と雨季のタイミングが多少異なるが、基本的に年間を通して観光に適している。


王政と政治

マレーシアには「国王」がいるが、実際に政治を動かしているのは首相と国会。国王は国を代表する象徴的な存在で、重要な儀式や書類の承認などを担っている。特徴的なのは、国王が一つの家系で世襲されるのではなく、9つの州の君主(スルタン)の中から、5年ごとに1人が選ばれるという仕組み。この9つの州は、元々それぞれが独立した王国だった地域で、今も君主が存在している。一方で、マラッカ、ペナン、サバ、サラワクの4州に君主はおらず、代わりに知事が任命されている。「王国」から「州」へと形を変えながらも、王政の伝統が国の制度に深く根付いている。


多民族・多文化社会

マレーシア最大の特徴は、多民族・多文化社会構造にある。主要民族はマレー系(約60%)、中華系(約23%)、インド系(約7%)で、さらにサバ・サラワク州の先住民族(カダザン、イバンなど)、オラン・アスリ(マレー半島先住民)も含まれる。各民族がそれぞれの宗教、言語、文化を守りながら共存しており、政府の制度もそれを尊重する形で設計されている。例えば学校や宗教施設は民族別に分かれていることも多く、祝日や食文化にも民族ごとの特色が色濃く表れている。


宗教

マレーシアの国教はイスラム教で、マレー系住民はイスラム教徒であることが法律で定められている。つまり、法律上はマレー人は全員イスラム教徒ということになる。

そのため、モスクは街の至るところにあり、礼拝時間にはアザーン(祈りの呼びかけ)が聞こえてくる。飲食店ではハラル(イスラム教の戒律に沿った調理)が重視されており、豚肉やアルコールを扱わない店舗も多い。

一方で、中華系住民やインド系住民の間では仏教・ヒンドゥー教・キリスト教も信仰されており、寺院や教会も街中に共存する。宗教行事は祝日として認められ、多民族が互いの信仰を尊重し合う文化が根付いている。


言語

公用語はマレー語で、教育や政府機関などの公式文書でも使用される。ただ、広範囲で英語が通じるため、日常会話レベルであれば英語だけでも十分に滞在できる。中華系の多くは中国語、インド系はタミル語を話すなど、家庭内言語は民族ごとに異なる。学校やメディアも多言語化されており、広告や映画の字幕なども複数の言語で書かれていることが日常的。


通貨と物価

通貨はリンギット。通貨コードはMYR、記号はRM。為替レートは2025年の筆記時点で1リンギット=35円程度。日本より物価は全体的に安いが、質の良いサービスやレストランとなると日本以上に高くつく事が多い。

ローカル屋台での食事や、タクシー/配車サービスGrabは日本と比べて格安といえる。宿泊施設も選択肢が幅広く、安価なホステルから5つ星ホテルまでそろっている。旅行者にとってコスパの良い国として知られ、各々の観光スタイルに合わせてグルメや買い物を楽しむ事ができる。


税制・サービス料金

対象商品・業種により異なるが、政府税(SST)が6%または8%が加算される。

高級レストラン、ホテル、スパなどでは、これに加えて10%のサービスチャージが加算されるのが一般的。基本的にチップは不要。

屋台やローカル食堂など売上の少ないお店ではSSTもサービスチャージは発生しない為、提示されている金額以外はかからない。

宿泊に際して、観光客には1泊RM10の観光税が課税される。


交通事情・移動手段

マレーシアは基本的に車社会であり、都市部でも徒歩移動に適さない場面は少なくない。ただ、公共交通としては、クアラルンプール都市圏を中心にMRT、LRT、モノレール、KTMコミューターといった鉄道網が整備されており、切符(トークン)以外に、ICカードTouch ’n Goでも乗車可能。また、配車アプリ「Grab(グラブ)」が普及しており、タクシーよりも料金が明瞭かつ安心して使えるため利便性が高い。長距離移動には長距離バスや国内線飛行機も充実している。


治安

とても良いが油断は禁物。マレーシアは東南アジアの中ではシンガポールに次いで治安が良いとされており、クアラルンプールなどの都市部でも普通に観光する分には大きな危険は少ない。ただし、スリやひったくり、置き引きなどの軽犯罪は特に人混みや観光地周辺で発生している為、油断は禁物。困っている人を装った詐欺になども注意。


食文化の多様性

マレーシアは「食の宝庫」と言われるほどバラエティ豊かな食文化が存在する。マレー料理、中華料理、インド料理、そしてマレーと中華が融合したニョニャ料理などが代表例。朝食は外食文化が強く、路地裏の屋台やコピティアムでは朝6時から活気がある。宗教的な背景から、イスラム教徒向けにはハラル認証の食事が中心で、豚肉やアルコールを扱わない店も多い。一方、中華系の店では豚料理やお酒なども楽しめる。多民族ならではの“味の共存”が旅人の舌を飽きさせない。


マレーシアの主な祝祭

多民族多宗教国家であるマレーシアでは多くの祝祭がある、ここでは中でも大きく祝われる祝祭を取り上げた。マレーシアの祝祭期間は、航空券・宿泊料金、観光にも大きく影響する事があるので要確認。

ラマダン

日付: 開始時期は毎年11日ほど早まって行くため、期間は毎年若干異なる。

ラマダンは、イスラム教徒にとって一年で最も神聖な月であり、約1か月間、日の出から日没まで飲食を断つ断食が全国的に行われる。期間中は各地にラマダン・バザールが立ち並び、日没後の食事(イフタール)に備えて多くの人々で賑わう。時期は毎年11日ほど早まる為、毎年少しずつ変動するこの時期は、イスラム教徒にとって特別な宗教的時間を体感できる貴重な機会である一方で、日中の飲食店営業が制限されたり、日没前は交通渋滞が発生しやすくなるなど、社会全体にもさまざまな影響がある。

ハリラヤ・プアサ

断食月が終わると国内最大のお祝いが始まる。都市部から地方への大移動で高速道路と空港が激混みになる。ムスリム家庭では「オープンハウス」で来客をもてなす文化もある。

旧正月

日付: 1月中旬から2月中旬の間で毎年変動

中華系の新年。赤い飾りや獅子舞、爆竹の音で街が彩られ、華やかな祝祭ムードに包まれる。中華系の人々にとって最も重要な行事であり、KLでもチャイナタウンを中心ににぎやかな雰囲気を楽しむことができる。一方で、市内の多くの中華系店舗や飲食店は数日間休業するため、特に旧正月初日から2日目にかけては食事や買い物にやや不便を感じる場合もある。ちなみに、中国は勿論、台湾、韓国、ベトナムなどの国でもこちらが正式なお正月。日本も明治時代までは旧正月を祝っていた。

ディーパバリ

日付: 10中旬から11月中旬の間で変動

ヒンドゥー教において最も大事な日とされる光の祭典。家々や寺院がランプやオイル灯で飾られ、インド人街がにぎわう。

独立記念日

日付: 8月31日

1957年のイギリスからの独立を祝う国民の休日。早朝からクアラルンプールまたはプトラジャヤで大規模なパレードが行われる。夜にはKLCC公園に花火が上がる。

マレーシアデー

日付: 9月16日

マレーシア誕生を祝う日。マレーシアの前身であるマレー連邦誕生を祝う独立記念日の方が大きく祝われる。

クリスマス

日付: 12月25日

マレーシアではクリスマスも祝日であり、シーズンになるとショッピングモールがクリスマスの装飾で飾り付けられる。イスラム教徒、仏教徒が多いマレーシアにおけるクリスマスは宗教色は強くなく、日本と同じく国民の多くはあくまでもイベントとして楽しんでいる。

ちなみに、イスラム教におけるイエス・キリストはイーサーと呼ばれ、神格化こそされていないものの、偉大な預言者の1人である。

タイプーサム

日付: 1月中旬から2月中旬の間で毎年変動

ヒンドゥー教の苦行祭。こちらは国のお祝いとは少し違うが、もの珍しさから世界中からヒンドゥー教徒や観光客、ジャーナリスト、フォトグラファーなどが集まる。夜明け前からバトゥ洞窟へ向かう巡礼行進で約150万人が集まる。銀色の神輿カバディや身体に針を刺す苦行が見もの。この苦行が危険と判断されインド本国では禁止されている。

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